世界のプラスチック使用量は多すぎる

経済の国際機関である世界経済フォーラムは、2016年にプラスチック汚染に関する驚くべき報告を発表しました。それによると、世界で製造されるプラスチックの年間生産量は2050年までに推計11億2400万トンへと現在の3倍に増える見通しで、現在のように生産量のほぼ33%が自然界に放出して海洋ゴミとなると、重量換算では海のプラスチックゴミの量は魚の量を超えるというものでした。

 

同フォーラムでは、プラスチックは回収されてリサイクルされる割合が現在14%と低いので、今後は回収とリサイクル、再生可能容器の利用、ゴミ分別収集のインフラ整備、自然界への流出防止などを進めるよう勧告をだしています。
しかし、もともとプラスチックは資源の限られた石油を原料とし、様々な添加剤や染色剤など有害な合成化学物質が加えられ、複雑な成分からなるため、効率の良いリサイクルは難しいのが現状です。

 

2017年の国際学術誌では、人間がこれまでに生産してきたプラスチックは累積量83億トンで、その76%が廃棄され、廃棄中リサイクルに回されたのはたった9%、焼却されたものが12%、ゴミ埋立地や環境中にゴミとして廃棄されたものが79%と、世界経済フォーラムの計測より約2倍多い約70%が環境中のゴミになってきたと報告しました。さらに、このままの状態が続くと2050年には累積約120億トンものプラスチックがゴミとして廃棄され、環境汚染を起こすと警告し、プラスチックの大量使用を考え直すべきと提言しています。83億トンをエンパイアステートビルの重量で計算すると、ビル2万5千個分になるというのですからすさまじい量です。

 

UNEPが2018年公開したプラスチック関連の資料はとても充実しています。以下のサイトからダウンロードできますので、御覧ください。
https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/25496/singleUsePlastic_sustainability.pdf

 

・ World Econimic Forum. The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics 2016.
http://www3.weforum.org/docs/WEF_The_New_Plastics_Economy.pdf

 

・ Geyer R, Jambeck JR, et al. Production, use, and fate of all plastics ever made. Science advances. 2017;3:e1700782.

日本のプラスチックの使用状況

2018年、UNEPが公開した資料によると、一人当たりのプラスチック廃棄の量は、世界各国のなかで、米国に次いで2番目に多いことが明らかになりました。
環境破壊の原因として、世界でプラスチック使用を規制するなかで、日本は法規制も遅れ、実際プラスチックの使用量が減っていません。

 

東京オリンピックや大阪万博開催に注目が集まるなか、このままの状態では、世界に恥ずかし限りです。

 

使い捨てのプラスチックは明らかに使い過ぎ、またリサイクルといってもサーマルサイクルが主流で、これは本当のリサイクルではなく、燃料として燃やすため、温暖化に繋がるのです。
(一社)プラスチック循環利用協会の資料によれば、2016年度プラスチック廃棄物の有効利用率は84%tとしていますが、その中の68%はサーマルリサイクルで、ほとんどを燃やしているのが実態です。

 


日本のプラスチックのリサイクルの実態のウソ

日本では、プラスチックゴミは分別回収してリサイクルにまわすか、可燃ゴミとして焼却していますが、国内でも環境中に放置されることもありがちです。

 

リサイクルといっても、大部分はサーマルリサイクルとして燃やしてゴミ発電に使用されており、CO2排出量が多く地球温暖化を促進しています。
表に示すように、リサイクルの大部分はサーマルリサイクルで、本当のリサイクルは2016年度のデータで27%sでしかありません。

 

ペットボトルについては、再度ペットボトルへのリサイクルが進んでいますが、収集・運搬のコストも入れると、利益よりもリサイクルにかかる費用の方が大きいことが明らかとなっています。限られた石油資源を原料にしたプラスチックの大量消費は問題です。
また別の記事に書きますが、プラスチックは原材料に内分泌攪乱(環境ホルモン)作用をもつものが使われており、そのために精子減少や不妊、がん疾患の増加、発達障害のリスクも上がることが科学的にわかっています。

 

さらにやっかいなことに、マイクロプラスチックは海洋のPCBやダイオキシンなど有害な残留性有機汚染物質を高濃度で吸着し、それが動物体内に入ると溶け出すことも確認されているのです。

 

私たちは、プラスチックの法規制を進めさせるとともに、日常生活で3Rの運動(reduce:発生抑制、reuse;再使用、recycle:再資源化)を心がけましょう。
なかでもプラスチックの使用を削減しましょう。目指すのはプラスチックフリーの生活です。

 

図は以下より引用 http://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf